2019年4月12日 (金)

抜け出てる小説家は何がちがうのか考えてみた

リコーGRの公式ページに昨日アップされたGRist柴崎友香さんの記事にある、柴崎さんのプロフィール(すごいプロフィール)を読みながら、あることを考えた。

日本人はほぼ全員が文を書ける。小説を書く人もたくさんいる。そのなかで、柴崎さんのようにプロデビューし、さらにはメジャーな賞を数々受賞する人と、そうでない人をわけるものは何なんだろうと。

才能、センス、運。こういうあいまいな言葉で片付けてしまうのではなく、もっと明確で建設的な理由があるのかもしれない、と。

これは小説だけに限った話ではない。音楽でも絵画でも写真でもそうだ。

村上春樹さんの「職業としての小説家」(スイッチパブリッシング)を読んで、全体から強く受けた印象は、村上さんはこれまで「たくさん小説を読んできた」ということと、「意識的に自分の文体をつくりだしてきた」ということ。

おもしろいなと思ったのが(村上さんらしい)「キーボードを叩きながら、僕はいつもそこに正しいリズムを求め、相応しい響きと音色を探っています。それは僕の文章にとって、変わることのない大事な要素になっています」

言葉は、意味を伝えるだけのものではない。リズム、響き、音色、も言葉から人は受け取る。ただしこれは音楽をたくさん聴いてきた村上さんの書き方。別な小説家は別なことを大事な要素だと思っているだろう。

音楽でも絵画でも写真でもそう。

その媒体の第一義的な役割とはちがうけれど作品の印象を決定的に変える「なにか」が、上述のふたつをわけるものなのかもしれない。

© all rights reserved

|

2019年3月 6日 (水)

自由と制限

個展「Five Seasons」と、2人(3人)展「Quotations」が開催中だ。

前者は、フルアナログの写真展。

後者は、10の作品を10の異なる技法/媒体(ゼラチンシルバープリント、鉛筆画、動画、水彩画、リスプリント、油彩画、ピアノ曲、アンビエントミュージック、弦楽四重奏曲、アニメーション)で制作した。

そのなかで私が最も自由に感じた技法が油彩。逆に最も不自由に感じたのが写真だった。

それはもしかすると、写真が身近すぎて窮屈に感じるということとも若干関係あるかもしれない。

しかしそれ以上に、そもそも写真は制限のある媒体だと思っている。

たとえば油彩は、支持体も自由、描くモチーフも自由、絵の具の選択肢も多くあって、使う筆や言ってみれば描く場所だって自由だ。

対する写真には、各種の制限がある。私がやっているゼラチンシルバーなら、フィルムや印画紙の種類も限られるし、光の条件が揃わなければ画が残らない。暗室でプリントしなければならないということもある。

もっと自由に思えるデジタルも、たとえば色において、メーカーがつくったアルゴリズムの範囲を超えることは、少なくとも撮影時にはない。現代のデジタルカメラは、いろんなことをユーザーが考えなくても自分でつくらなくてもできるようにメーカーがお膳立てしてくれている道具。そこには便利さと同時に制限も当然生まれる。

しかし、自由とクリエイティヴィティは必ずしも比例するわけではない。

制限があるとよけいに創造性(想像性)が発揮できることはよくある。

振り返ってほしい。たくさん交換レンズを持っていった旅と、1本だけ持っていった旅と、どちらが納得のいく写真が撮れただろうか。

ギターソロが、オーケストラに常に劣るだろうか。

まあ、そうは言っても油彩の自由さは、久々にやってて楽しかった。いま乗っているピストバイクくらいの軽快さだった。9点を仕上げて最後に制作したからよけいにそう感じた。制限は乾くのに時間がかかったことくらい。それとても制作の冷却期間として機能した。50歳で画家転向宣言しようかな(しないけど)。

Oil460

© all rights reserved

|

2019年2月25日 (月)

安達ロベルト×塚越菜月「Quotations」

「世界の文学を起点に、二人の作家が想像を巡らせる。

著者も物語の名前も教えず、たった一文から作家は制作する。
そんななぞなぞみたいな展示をやりたいと思いました。

写真、音楽、絵画など様々な表現方法を行き来する安達ロベルトさんと、
アイシングクッキーで立体的に表現する塚越菜月さんをパートナーに
めくるめく1週間の始まりです。」

Roonee 247 fine artsの杉守加奈子(文学からの引用を担当)

安達ロベルトはこの展覧会のために、10の作品を、写真だけでなく、水彩、鉛筆、ピアノ、弦楽四重奏、動画など、10の異なる手法・媒体で制作しました。

アイシングクッキーアーティストの塚越菜月さんの国内外で絶賛される作品の一部はこちらからご覧ください。びっくりしますよ。
www.tsukagoshinatsuki.com/

4s

Watercolor © Robert Adachi all rights reserved

安達ロベルト×塚越菜月「Quotations」

会期:2019.03.05(TUE)- 2019.03.10(SUN)
12:00-19:00(最終日16:00まで)

会場:Roonee 247 Fine Arts
www.roonee.jp
〒103-0001
東京都中央区日本橋小伝馬町17-9 さとうビルB館4F
TEL & FAX 03-6661-2276

JR総武線 馬喰町駅下車 徒歩3分
都営地下鉄新宿線 馬喰横山駅下車 徒歩3
都営地下鉄浅草線 東日本橋駅下車 徒歩8分
東京メトロ日比谷線 小伝馬町駅下車 徒歩4分

☆同時開催☆
「Five Seasons」
2/20-3/9
at KKAG
http://kkag.jp/

|

2018年12月 8日 (土)

個展のみどころ

個展「SONIC」に展示するのは全部「リスプリント(Lith Printing)」という技法でプリントした。

詳しくはトークイベント(満員御礼)で話すが、それに至るまではいろんなことを試して、けっきょくこの技法で全部プリントしたのには2つ理由がある。

1つは、過去にこの技法で数回写真展をしたし、写真集も出している。加えて近年はそのワークショップもやっている。そんなわけで、慣れ親しんでいる技法だから(だからといってコントロールがむずかしい技法であることにはかわりはないけど)。

2つ目は(これが最も大きい)、自分が長い間出したいと思っていたトーンが出せたから。

それは、木版画のような画肌。ずっとそんなトーンを出したいと思っていたがなかなか実現しなかった。

でも今回出せたのは、とくに入ってすぐの部屋にある写真がどれも今年撮影したもので、それまでの撮影方法でなく、すべてリスでプリントすることを前提に撮影したから、その影響なのかもしれない。

そんなこともぜひ楽しみにいらしてください。

安達ロベルト写真展
Robert Adachi Exhibition
SONIC

2018年12月11(火)〜25(火)

Gallery Camellia / ギャラリーカメリア
東京都中央区銀座1-9-8奥野ビル5階 502号

詳細はこちら

L1014320s

© all rights reserved

|

2018年12月 6日 (木)

雨音でリラックス

今朝、息子がメディテーションのポーズを取ったので、久々に親子で(ほんの短時間だが)メディテーションをした。

「マインドフルネス」などでメディテーションが注目されるのは、現代社会に言葉と文字情報が氾濫しているからというのが大きいと思う(心と言葉と文字についてはここに書いた)。

メディテーションをするときは、雑念、つまり「あたまのなかの言葉」から意識をそらす。

おもしろいのは、あたまのなかの言葉から意識のフォーカスがズレていくと、すーっと身体の力が抜けていくこと。

裏を返せば、人(少なくとも私)は、言葉によって大なり小なり緊張しているのだ。言葉を手放すと、緊張も消えていく。

そして、あたまのなかの言葉から意識をそらすためによく使うのが、言葉以外の音である。

今朝のメディテーションでは、雨音に耳を傾けた。脳内の言葉からフォーカスをずらし、そのさーさーひたひたという音に意識を向け、楽に呼吸していると、すぐに身体がリラックスした。

言葉はいわば、過去や未来を思い煩うのに便利なツール。しかし、自然の音や呼吸は、今ここがすべて。今ここに集中すると、マインドがゼロリセットされる。それはすなわち表裏一体でマインドフルな状態なのである。

Img_4392s

© all rights reserved

|

«SONICな体験