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2016年3月 8日 (火)

何が人の心を打つのか

国連で働きたくて大学では国際法を学んだものの、卒業間際に、ここで作曲をやらなくては一生後悔すると思い、作曲家(すずきみゆき先生)に弟子入りし、以来、紆余曲折はありましたが(その10年後に写真を始めるとか)ずっとものづくりをやっています。

その間考え続けている(そして未だに明確な答えの出ていない)問いが、「何が人の心を打つのか」です。

この問いを考えるときに必ず思い出すのが、ソニーの創業者の1人、故・盛田昭夫さんの英語スピーチを聴いたときのことです。

十代でソニーの奨学金をいただいて留学した経緯で、大学時代のあるとき、ソニー本社に呼ばれ、大勢の奨学生OB、現役生とともに、盛田さんの話を生で聴く機会を得ました。

盛田さんの英語の「発音」はジャパニーズイングリッシュそのもの。発音だけ取れば、決して上手というわけではありません。それもそのはず。大人になってから身につけた言語なのですから。

ところが、言葉一つひとつが響いてきて、私たちの心を打ったのでした。

理由はたくさんあると思いますが、第1に、口にされたのが盛田さん「自身の言葉」であるということ。それは、経験に裏打ちされた内容と語彙による言葉。「多国籍企業」という言葉がまだないころから第一線で積んできた経験です。仮に同じ内容を誰かが代理で読んだとしたら、はたして感動できたかわかりません。

第2に、シンプルでクリアな語法であること。ネイティヴのように流暢でないことを逆手にとった語り口です(もちろんご本人にそのつもりはないでしょうが)。

そして第3に、伝えたいことがはっきりあって、それを伝えるという意志にもとづいて語っているということ。

この経験ではっきりわかったのは、技術(この場合は英語を話す技術)はある程度は必要なものの、技術を極めていった先に感動があるわけではないということです。

もちろん技術がなければ何も伝わりません。非常に大切です。でもそれがすべてではないということです(ただし、それを技術を身につけないことの言い訳にしてはいけません)。

その後、それまで専門教育を受けたことなく音楽を学び始めるにあたって、楽器奏法をはじめとする技術にコンプレックスのあった私は、このときのことを思い出しては大いに励まされ、盛田さんの英語スピーチのように音楽を奏でたいと思ったのでした。

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