« 2016年4月 | トップページ | 2016年6月 »

2016年5月

2016年5月24日 (火)

感覚で考える

過去2回の記事で、6/10のトークイベントに向けてのプレトークを木下アツオさんとの間で行っています。「プレ」ながら既におもしろい話がたくさん飛び交ってます(前編 後編)。

なかでもとくにおもしろいと思っているのが、「感覚で考える」ということ。それは例えば、「視覚で考える」、「聴覚で考える」、「味覚で考える」というようなことです。

でも、言葉でなく、視覚、聴覚、味覚などで考えるって、よくわかりませんよね。

ちなみに、「考える」とはどういうことかというと、このネット辞書によると、「知識や経験などに基づいて、筋道を立てて頭を働かせる」というのがその1つです。それを感覚で行うのです。

例えば、モーツァルト。逸話には事欠かないモーツァルトですが、14歳のときにアレグリのミゼーレを1回聴いただけですべて記憶して記譜したとか、作曲はあたまのなかにすべてのパートの曲全体が鳴るのを譜面に書き落とすだけなどと言われています。まさに完璧な「聴覚的知性」です。

また、ピエール・エルメのドキュメンタリー映像を見たとき、彼が新しいスイーツを創造するときの、立体的な発想に驚きました。おそらく彼は味覚(と視覚と触覚)で考え、まるで建築のように、味を構築していくのでしょう。

木下アツオさんは、人には創造的に感覚で考える場所があると言っています。そして、それを「空間」と呼んでいます。デジタル写真の「色空間」のようなものです。モーツァルトにはモーツァルトの「音空間」が、ピエール・エルメには彼の「味空間」があって、そこでクリエイティヴなことが起きるのです。あなたにもあなただけの空間があるのです。

R3066259

© all rights reserved

|

2016年5月22日 (日)

「写真は写真にあらず」 安達ロベルト x 木下アツオ プレトーク(2)

来る2016年6月10日(金)に、個展「断片化の前に」スペシャルイベントとして、安達ロベルト×木下アツオ フォト・サロン東京スペシャル「写真は写真にあらず」を行います(ウェブサイトはこちら)。

このトークイベントでは、新しいものごとをつくりだすためのヒント、クリエイティヴに発想するためのヒントをたくさんお話します。

我々2人が普段どんなことを考え、どんなことをしているか、時間の許す限り出し惜しみせずお話します。

写真に限らずいろんな分野で新しい発想をしたいと思っているあなた、ぜひいらしてください(それに、質疑応答で、木下アツオさんにあなたの「課題」を読み取ってもらうこともできるかもしれませんよ?!)。

さて、今回の記事は、前回のつづき。木下アツオさんにさらに質問してみました。

Photo3_2
神戸メリケン画廊でのトークイベントより

安達ロベルトから木下アツオさんへの質問(後編)

ロベルト 以前、「写真とはサンプリング」とアツオさんが言ってたように記憶しています。その発言をヒントに、写真を音楽で考えると、いろんなことがよくわかります。

これまでの「カメラマン」は、音楽でいうと「録音技師」の役割が大きかったように思うのです。対象をいかに正確に、きれいに録れるか。でも誰もが写真を撮れるようになった今、写真家、とくに「写真作家」に求められているのが、「作曲家」や「アレンジャー」の役割です。

ところが写真ではこれまで、「録音」と「作曲」を、ごっちゃに考えてきたように思うのです。その境界を意識できると、今求められていることに近づけるように思っています。

ところで、前回、「視覚、聴覚、嗅覚が感情をつくる」という話が出ましたが、アツオさんにとって大切な感覚って何ですか?

アツオ ぼくの場合は、嗅覚かもですね。

ロベルト 嗅覚ですか。原初の感覚ほど強く感じるんですね。

アツオ はい。

ロベルト 視覚が強い人は、言葉だけでなく「視覚で考える」、嗅覚が強い人は「嗅覚で考える」、ということをやっているように私は感じているのですが、そのような実感はアツオさんにもありますか?

アツオ あります。しかも、同じように視覚で考えている人でも、人によって、「Adobe RGB」と「sRGB」のように、それぞれの「色空間」のようなものがあると思っています。

ロベルト 色空間ですか!

アツオ 一人ひとりに訊いてみるとおもしろいでしょう。「あなたがクリエイティヴなことを考える空間はなんですか?どこにありますか?」と。

ロベルト 自分がより自由になれる空間、独自の空間があって、そこで思考し、創造する、ということですね。

アツオ 一人ひとりがクリエイティヴになれる、個性を発揮できるヒントがそこにあると思いますよ。あとは「考える単位」ですね。

ロベルト 単位ですか。

アツオ ある人は例えば輝度で写真を考えるし、またある人はBPM(テンポ)で音楽を考えます。自分自身がものごとを測るときやクリエイティヴな発想をするとき、得意な単位は何か、それを知ることも重要です。

☆ 話はまだまだ尽きません。つづきは6/10に!

**  *   **   *   *     *      ** *     * *    *        *

「写真は写真にあらず」

安達ロベルト×木下アツオ フォト・サロン東京スペシャル

2016年6月10日(金)19:00〜
ギャラリー冬青

【定員】 先着35名
【ご予約方法】 お電話またはメールにてお願い致します。
 電話番号:03-3380-7123
 メール:gallery@tosei-sha.jp (件名:安達ロベルト氏トークショー申込み)
【参加費】 2,000円

【内容】 大学で国際法を学んだあと、音楽、絵画、音楽劇の脚本・作曲・演出と、メディアを 自在に縦横断しながら写真作品をつくりつづける安達ロベルトと、 写真家でありながらクリエイティブ・ディレクターとして、 写真展、写真学校、イベント、音楽、ギャラリー、カフェ、農業をディレクションする木下アツオが、 「写真バカ」じゃないからこそできるクリエイティヴな写真制作とは何かについて語ります。 2人がどのように新しいアイディアを生み続けているのか、何を考え、どのように制作しているのか、 その創造性の核心に迫ります。

|

2016年5月 8日 (日)

「写真は写真にあらず」 安達ロベルト x 木下アツオ プレトーク(1)

来る2016年6月10日(金)に、個展「断片化の前に」スペシャルイベントとして、安達ロベルト×木下アツオ フォト・サロン東京スペシャル「写真は写真にあらず」を行います(ギャラリーのウェブサイトはこちら)。

2010年にリコーGXRの全国巡回写真教室で会って以来交友を深め、いろいろなイベントをともにやっている木下アツオさん。神戸在住で、写真学校やギャラリー、御苗場のレビュアーなどで有名ですが、その活動領域は写真にとどまりません。私が知らない側面もまだまだありそう。トークイベントの前に、アツオさんにいろいろ質問してみたいと思います。

本番はどんなトークになるのか、今からワクワクしてます。

ちなみにタイトルは、中唐の詩人・白居易の「花は花にあらず」をもじっています。

Atsuo

木下 アツオ

つくる人・1971年兵庫県豊岡市生まれ。(クリエイティブディレクター、写真家、建築家)建築リノベーション会社、株式会社ライフテック 代表取締役、神戸港倉庫リノベーション「国産2号上屋SO-KO」などを企画・運営。有限会社時代 取締役、meriken gallery & cafeディレクター、波止場の写真学校・学校長、メリケン写真スタジオなど運営。現在は映像・音響・写真・建築などの技術を総合しクリエイティブディレクターとして全国で活動中。

・特技
たくさんのコトを同時に考えて、それぞれを繋げること。
どんな球でもホームランは無理だけど、ヒットにすることはできる。
時間はかかるけど1番になることはそんなに難しいことではないと思っている。

Photo3_2
神戸メリケン画廊でのトークイベントより

安達ロベルトから木下アツオさんへの質問

ロベルト アツオさんは私が知る最もクリエイティヴな人の1人で、多くの分野で活躍しつつ、それぞれのジャンルに属する人たちと共通言語を持っている希有な人物だと思います。写真に限らず、これまでされてきたこと、いま尽力されていることなどを教えてください。

アツオ ロベルトさんとぼくとの共通点と勝手に思っていることがあります。それは「視覚的に感じたこと、聴覚として感じたこと、臭覚として感じたこと。この3つの感覚が感情を作っている」ということです。

ロベルト それは私もそう思いますね。加えて「時間軸」という共通項もあるかもしれません。アツオさんも私も、動画や音楽の編集もするので、時間が流れることによって感情が生まれる力学を日常的に感じているんじゃないでしょうか。

アツオ ロベルトさんが持っているぼくに対する関心は、「モノ」じゃなくて「コト」を作っているからだと思います。

今、力を入れていることは、波止場の写真学校を全国に普及させること。学校運営です。

それから、人の課題が見えます。

ロベルト 「モノ」をつくることと「コト」をつくることの違いは何でしょう?

アツオ モノは形がはっきりあるので評価がしやすいですね。

コトは評価されるのに時間がかかるかもしれません。それにダイレクトにありがたいと思われることも少ないですね。

モノよりコトの方が作るのが大変で、しかも壊れやすいし腐りやすいです。

ロベルト なるほど。コトのほうが「壊れやすいし腐りやすい」というのは非常によくわかります。私は20代の頃、多くの組織に属したり、組織をつくったりしました。で、そのほとんどの組織でリーダー的役割をしました。そのとき感じたことはまさにそれです。

私が音楽活動をしながらも「バンド」や「会社」といった固定組織を持たない理由は、まさにそれです。組織は一度固定化すると、その後は壊れる方向、腐る方向に進みやすいので。このへんはトークのときも話したいですね。

ところで、「人の課題が見える」というのはたいへん興味深いです。最近あった例を差し支えない範囲で教えていただけますか?

アツオ よく見えますよ。いつも見えていて日常なので、、、

ロベルト そうなんですね。昨今の写真家や写真についてはどうですか?

アツオ カメラがどんどん良くなっています。いいカメラとPhotoshopとネット環境、SNSがあれば誰でも有名写真家になれます。

その意味で、現職の写真家は、写真家としての価値が問われていることが多いと思っています。

最近は写真家と呼ばずにブロガーさんって呼ぶようにしています。

ぼくも勘違いされたくないので、写真家と名乗らず「つくる人」と名乗っています。

カメラメーカーが写真家をダメにしているし、写真雑誌も写真家をダメにしています。

(つづきます!)

**  *   **   *   *     *      ** *     * *    *        *

「写真は写真にあらず」

安達ロベルト×木下アツオ フォト・サロン東京スペシャル

2016年6月10日(金)19:00〜
ギャラリー冬青

【定員】 先着35名
【ご予約方法】 お電話またはメールにてお願い致します。
 電話番号:03-3380-7123
 メール:gallery@tosei-sha.jp (件名:安達ロベルト氏トークショー申込み)
【参加費】 2,000円

【内容】 大学で国際法を学んだあと、音楽、絵画、音楽劇の脚本・作曲・演出と、メディアを 自在に縦横断しながら写真作品をつくりつづける安達ロベルトと、 写真家でありながらクリエイティブ・ディレクターとして、 写真展、写真学校、イベント、音楽、ギャラリー、カフェ、農業をディレクションする木下アツオが、 「写真バカ」じゃないからこそできるクリエイティヴな写真制作とは何かについて語ります。 2人がどのように新しいアイディアを生み続けているのか、何を考え、どのように制作しているのか、 その創造性の核心に迫ります。

|

2016年5月 7日 (土)

見えるモチーフと見えないモチーフ〜写真展をつくる(17)

今回は3つめの意図、作品のコンセプト(知的インテンション)についてお話します。

写真展「断片化の前に」(写真展情報はこちら)は、ジャンルで言えば「ランドスケープ」に属する組写真で、モチーフは「文明」です。文明の発展には「土」と「水」が必要ですから、それらの要素も多く含まれています。

選んだのは、歴史的、考古学的、人類学的、社会的、いずれかの意味のある土地。東京が中心です。今あるものをそのまま写してはいますが、その画から、過去にそこにあったものや、遠い過去から現代までの変遷を想像できるかもしれません。

たとえば、新宿の俯瞰図。そこには縄文時代にコミュニティがありました。でも、写真にその痕跡はまったく見えないでしょう。当時ここでどのような暮らしをしていたのでしょう。

徳川家康は江戸から富士山が見えることを重要視したそうです。江戸の人々は富士をどのように見ていたのでしょう。また縄文時代までさかのぼると地形がかなり異なっていましたから、当時の富士山はどうだったのでしょう。

写真に見えるのは現代の新宿、現代の富士ですが、そこからこのようにイマジネーションを膨らませることができます。目にみえるモチーフと目に見えない(けれど頭のなかで見えるかもしれない)モチーフ、両方を写しています。

ただし、そのような見方を強要するわけではありません。前回前々回にお話したように、シンプルに、ランドスケープのゼラチンシルバープリントとしても楽しんでいただけると思います。

ところで、ステートメントに引用しているのは、人類学者・マリリン・ストラザーンの言葉。著書「部分的つながり」のなかの「人類学を書く」という章にある1文です。

焦点を広く当てるか狭く当てるか、離れて見るか近くで見るかで、対象が一緒でも、導き出されるものが変わります。それは写真と共通していて、今回の私の作品につながります。

また、記録や比較のために発展し、撮り手の「私」と被写体の「彼ら」との関係を模索している写真は、人類学の発展との共通項が多いとも思います。

更新のお知らせは

Twitter https://twitter.com/robertadachi
Facebook https://www.facebook.com/adachi.robert/

をチェックしてください。

☆安達ロベルト写真展「断片化の前に Before Fragmenting」冬青ギャラリー6/3〜25

Adachi_robert_show05

(c) all rights reserved

|

« 2016年4月 | トップページ | 2016年6月 »