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2016年6月

2016年6月28日 (火)

写真展を終えて

写真展「断片化の前に Before Fragmenting」を終えました。いらしてくださった方、プリントを購入くださった方、応援してくださった方、ありがとうございました。

終えた充足感はありますが、浸れるようなものはまったくありません。頭は会期が始まってすぐに次の創作に行っていました。ものをつくる人はそういう人ばかりでしょう。満足したらおしまいです。

お客さまは概して好意的かつ品のある方が多く、作者である私のほうが癒されるような場面もありました。このブログを読んで来てくださった方も何人もいました。

収穫も反省も挙げれば切りがありませんが、収穫を少しだけ書いてみます。

今回は自分なりの新しい写真へのアプローチができました。わずかですが、歴史的、考古学的、人類学的、言語学的な視点を与えることで、ランドスケープは違って見えるという実験を行いました。結果、そうすることでランドスケープは「記号」になり得るということがわかりました(実際、ある方に「楽譜のように見える」と言われました)。でも、やりすぎると学術写真になってしまい、写真が文に添えられるかっこうになってしまうので、今後もバランスには注意が必要です。

プリントに自分なりのトーンをつくれたのも収穫でした。万人受けするトーンではありませんが、好きな人には好きでいてもらえるでしょう。

もっとも、私は同じトーンを続けるつもりもありませんので、次回はどうなるかわかりません。

レヴィ=ストロースが「悲しき熱帯」を書いたのがおよそ私の年齢。それまでの学術書とも旅行記とも一線を画す文体で書かれたそれは、新たな知性のかたちを我々に示しました。私ももっと考えつづけ、つくりつづけないといけません。

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2016年6月16日 (木)

写真と音楽の確かめ算

先週末はコンサートで演奏して、今日は1曲書き上げて、明日からもしばらくアレンジや作曲の仕事が続きます。その一方で、写真は個展開催中です。

よく「写真と音楽、どっちがメインなんですか?」と訊かれることがありますが、このブログの読者の皆さまには、それは主婦に「掃除と料理、どっちがメインなんですか?」と訊くのと同じくらい愚問だと知っておいてほしいです(笑)。

ともあれ、同時に聴覚と視覚でものづくりをしていると、あらためて二つに共通性があることがわかります。

たとえば「モチーフ」。

モチーフは、音楽ならばメインのメロディで、写真(絵画)ではメインの被写体です。

初心者のうちはとくに、音楽でも写真でも、モチーフを「キャッチー」にしたがります。おそらくそのころは、それ以外のものがよく聞こえていない、よく見えていないからじゃないかと思っています。人はメロディや被写体に感動するのだと思っていたりします(少なくとも私はそんな感じでした)。または、キャッチーじゃないと人に無視されそうで不安ということもあるかもしれません。

でも、次第に、大切なのはモチーフだけじゃないことにきづいていきます。「トーン」も大切だとわかってきます。音楽ならばハーモニーや楽器の音色、写真なら配色、明暗の扱い。

コントラスト、解像感、遠近感なども、両方に共通して大切です。

そして、リズム。リズム感覚は写真の構図感覚に近いです。

そういうことがわかってくると、キャッチーなモチーフだけではおもしろくなくなってきます。たとえばベートーヴェンは、たくさんのモチーフのスケッチを書いたそうですが、実際に楽曲に採用したのは、そのなかでも比較的シンプルなモチーフだったそうです。そのほうが展開しやすいし、曲を組み立てやすかったのでしょう。抽象的な印象も与えます。

このように、音楽と写真には共通点が多くあります。なので、今日作曲をしているときも、ときどき音を写真(画像、映像)に置き換えていました。そうすることで、算数の「確かめ算」のように、作品のよしあしを客観的にみることができます。

私の場合は音楽と写真ですが、料理が得意な方は料理に、文章が得意な方は文章に、運動が得意な方は身体運動に、置き換えて考えたらいいと思います。きっと共通点があるはずです。

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2016年6月 1日 (水)

やったこと、やらなかったこと、できたこと 〜写真展をつくる(18)

いよいよ3日より写真展「断片化の前に Before Fragmenting」が始まります。

この展覧会では、今までの個展と同じようにやったこと、新しくやったこと、今回はやっていないこと、があります。

まず、今回もアナログのブラック&ホワイト、ゼラチンシルバープリントです。

デジタルから考えると相当手間かけてます。もちろん、写真に限らず、手間をかけたからといってそれがいいものになるわけでは必ずしもありません。でも、ちゃんとした素材を仕入れてちゃんと仕込んでちゃんと調理したものが美味しくなるようなことと、同じことをしているんだと思っています。美味しいと思っていただければうれしいですし、個性的な味と思っていただくのも光栄です。

荒木さんがよく言われてることで、アナログ写真はそのプロセスでずっと「水」を使う、ということがあります。私にとってもそれは大切なポイントなんだろうなあと今回あらためて感じました。

あと、フォーマットが35ミリなのも、プリントサイズが小さめなのも、これまでと共通しています。

新しくやっていることもあります。印画紙と現像液が過去の個展では使っていないものです(印画紙については前にここで触れています)。マットの切り方も少々違います。

今回やらなかったのが、ギャラリーに流す音楽をつくること。過去の個展では、作曲して録音して、CDをつくったりしています(これこれなんかがそうです。なのでこれらは、ギャラリーで流す音源を探している方にオススメです)。

冬青さんは、普段から音楽を流していません。私は実はそれに好感を持っています。

日頃ギャラリーやカフェに行って、ここは居心地がいいなあと思ったら音楽がかかっていなかった、という体験をときどきします。

日本の店舗や人の集まるスペースでは、どこでも「BGM」が流れています。たぶん、音楽を選んで使って居心地のいい空間をつくろうという積極的な意図があってやっているところは少数で、むしろ、BGMがないことを理由に何かが不足していると思われるのがいやで流しているとか、そもそもBGMがあるのがサービスだと疑わずにやっているといった、消極的な理由が多いのではないでしょうか。

音楽は空間を直接間接支配します。近所の少年たちが深夜にたむろって困っていたコンビニのBGMをクラシックにしたら来なくなったという話があるほどです。

そんなわけで、今回はCD「Before Fragmenting」をつくりませんでした(意外なことに、ライヴ会場よりギャラリーのほうがCDが売れるので、ちょっとさみしくはあるのですけどね)。

最後に、今回できたこと(いろいろあるのですがとりわけ)。写真は、ウェブや印刷で見たほうが、実物のプリントよりよく見えることがよくあります。でも今回は、実物のプリントで見ていただくのがベストじゃないかなと思っています。ぜひいらしてください。

☆安達ロベルト写真展「断片化の前に Before Fragmenting」冬青ギャラリー6/3〜25

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「断片化の前に」プラニング・スケッチより

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