May 06, 2008

一杯のコーヒーから(3)

コーヒーを飲んでいつも面白いと思うのが、同じコーヒーでも、抽出する人によって味が違うということ。

私のよく行くカフェでは、オーナーである世界バリスタ選手権1位のオーストラリア人バリスタを先頭に、同じブレンドから一人ひとりまったく違う味のエスプレッソを抽出してくれ、飲み手を楽しませてくれる。

同じカメラやレンズ、フィルム、印画紙を使っていても、一人ひとり写真のトーンが違うのと一緒。不思議だが、だからこそ面白い。ちょっと大げさに言えば、言葉ではウソがつけても、コーヒーではウソはつけない。

自分でコーヒーをいれはじめたのは、10年くらい前だろうか。友人たちと旅行に行ったとき、たまたま宿にあったものでつくったら「アダチのいれるコーヒーは美味い」とおだてられてその氣になった(笑)。その後エスプレッソは8年、ネルドリップは4、5年くらいやっている。

先日の写真展では、時間があるときは、その人に故郷や仕事の話を聴いて、それをイメージしながらネルでコーヒーをいれた。そのようにいれたコーヒーはたいがい、そのことを伏せていても、不思議と本人に絶賛された。いわば特定の飲み手にチューニングされたコーヒー。そういう芸当ができるようになったのは、ごく最近のこと。

飲み始めて十数年。いつの間にか、もう引き返せないところまで来てしまったようだ。

(つづく)

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May 03, 2008

一杯のコーヒーから(2)

コーヒー抽出法の双璧は、ネルドリップとエスプレッソだと思う。

ネルドリップというのは、布フィルターで落とすドリップコーヒーのこと。紙フィルターと原理は似ているが、味は随分違う。紙フィルターより、味がまろやかで、液体もとろっとした印象になる。

ネルは扱いが面倒と言って敬遠する人も多いが、そんなことはないと思う。コーヒーメーカーに比べれば確かに手間はかかるが、同じ豆から落としたとは思えないほど違う味になる。

一方、エスプレッソは、細かく挽いた豆に高圧力をかけて抽出するコーヒーのこと。イタリア語で「エクスプレス」を意味するように、ドリップコーヒーに比べて抽出時間が短い。スターバックスの登場により、日本でも近年かなり一般的になった。

どちらのほうが好きかと問われれば、両者は同じコーヒーだが別物で、どちらも同じくらい好きだと答えるだろう。ただし、素人にいれてもらうなら、エスプレッソのほうがはずれが少ないのでそちらを選ぶだろう。

ネルドリップとエスプレッソ、どちらもおいしく抽出できるようになるのには、それなりの訓練が必要だ。好きが高じて自分でもいれるようになったのだが、少なくとも私の場合はかなりの時間がかかった。ネルドリップにいたっては、満足のいく味を出せるようになるまで、2年は要しただろうか。

その甲斐あってか、今では周囲から「カフェでもやったら」とお世辞を言われるくらいにまではなった。さすがにカウンターに立つつもりはないが、オーナーはいつかやってみたいなぁ。

(つづく)

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April 30, 2008

一杯のコーヒーから(1)

私は自他ともに認める大のコーヒー好きだ。どれくらい好きかというと、うちのネコのエミリオの次くらいに好きだ(かえってわかりづらいか)。

コーヒーをほとんど飲まない家で生まれ育ったので、コーヒーに目覚めたのは案外遅く、22、3の頃。ちょうどアートを志したのと時期的に重なる。

「目覚めた」と言ったのにも意味があって、コーヒーを飲み始めたきっかけが、実は眠気覚ましのためだったのだ。

大学生の時分はやたら忙しく、眠い日が多かったので、どうしたら日中しゃきっとできるか、その方法を探していた。いろんなお茶、アルコール(!)などを試したが、あるとき、コーヒーを飲んだら急に頭が冴えて、気持ちが大きくなったことがあった。

そのとき飲んだのは、学食のおばさんがいれてくれたコーヒーだったから、今振り返ればそれほどハイクオリティのものだったとは思えないのだが、コーヒーの「免疫」のない私には、けっこう効果があったようだ。それ以来、目の覚めるコーヒーを求め続けるようになってしまった。

もともと胃腸が強いほうではないので、飲み過ぎたり、質の悪いコーヒーを飲むと、かえって疲れる、眠くなることがあるということも分かった。そういう背景もあって、良くも悪くも、どんどん良質のコーヒーを求めるようになっていった。またある時点から、覚醒効果だけでなく、味のよしあしも求めるようになった。

幸か不幸かそれはそれはカメラのレンズ沼のようなもので、求めれば求めるほど魅力的なコーヒーが出てきたのである。

(つづく)

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April 20, 2008

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April 18, 2008

写真展めぐり

昨日、時間ができたので、半日かけて3つの写真展を廻った。どれもモノクロームの写真展だったが、それぞれに個性があって、面白かった。

最初に行ったのが、菊地久子写真展「Side by Side」。すべて銀塩スクエアフォト。

今回の展示ではないが、過去に菊地さんの病院での写真を視て、感銘を受けたことがある。下手をすれば生活臭むんむんの写真になりかねない病室というロケーションで、やさしく、清潔で、前向きな写真を撮っていたのが非常に印象的だった。

今回の写真展は、ご本人いわく、人物から離れて、風景や物を中心に撮ってみたとのこと。彼女の挑戦を私は評価したい。


次に行ったのが、木村直人写真展「Wind and Window」。

こちらもスクエアフォト。欧米の写真事情にも詳しい木村さんの、こちらもある意味で日本の写真界の主流に挑戦するようなスタンスでの展示。写真にはエディションが振られ、タイトルに並んで値段がつけられている。

だが、写真そのものは、木村さんの静謐な視点。止まっているようで動いていて、動いているようで止まっている、独特の切り口だ。あえて雄弁には語らず、聞こえる人にだけ聞かせる。おだやかな確信に満ちた空間だ。


最後に行ったのが、ライカギャラリーでの上田義彦写真展「at Home」。

一般公開に先駆けてのパーティー会場だったので、人がとにかく多かったが、作品を一つひとつじっくり視ることは、かろうじてできた。

写真集が出る前から上田さんのファミリー写真は雑誌で視て、ものすごく好きだった。ローキーでローコントラストなのに、すべてのディテールとあらゆるドラマが見える上田調のプリントに驚いたものだ。何年か前のエプソンでのインクジェット展にはあえて行かず、今回はじめてオリジナルプリントを視た。

たった一点のハイエストライトを残してあとはぎりぎりまでグレーに沈めるプリントに、氏の自信と執念と美意識を感じた。

かれん夫人とエリオット・アーウィットさんも列席していた。ご本人と挨拶したとき、氣の利いたコメントが一切言えず、帰宅時にかなり後悔。

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玄光社「カメラ・ライフ」発売

「コマーシャルフォト」誌などで有名な玄光社さんから、あたらしいムック「カメラ・ライフ(略してCL)」が発売されました。

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カメラと旅をテーマにした第1号。
読めば、好きなカメラを持って旅に出たくなりますよ、きっと。

私は「CLピープル」というセクションで、2004年のラオスでの写真を載せています。最近はあまり撮らなくなった「人」が中心のモノクローム旅写真2点。こういう写真もたまにはいいものですね。

ぜひ書店で手に取ってご覧ください。
そして、できればレジまで手に持ってお運びください。

ムックの詳しい中身はこちら>

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April 16, 2008

脱力系(4)

まじめな話題が続いたので、、、、。

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April 14, 2008

thank you

写真展「Awareness」が終了しました。

ひとことで言えば、タイトルの通り、「氣づきに満ちた」写真展でした。

お越しくださったあなたに感謝です。

同じネガからプリントしても一枚一枚微妙にトーンがちがうように、同じ人間でも一人ひとりが微妙に異なる感性を持っていて、だからこそ共感しあったり影響しあったりして生きていることがおもしろいということを、あらためて感じることのできた一週間でした。

撤収後まもなく余韻がフェイドアウトしたので、氣持ちはもう、次。

同時開催のお誘いをくださり、期間中もずっと助けてくださった、敬愛する写真家にしてプリンターの加藤法久さんには、最上級の感謝をしてます。

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April 04, 2008

在廊予定

写真展「Awareness」の作者在廊予定です。

8日(火):終日
9日(水)、10日(木):時々います(笑)。運がよければ(わるければ?)会えるでしょう。
11日(金):終日
12日(土):14:00~
13日(日):終日(~17:00)

写真展の詳細はこちら

お待ちしてます!

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March 30, 2008

写真に写るもの(2)〜生活感

「写真(プリント)には撮る人の生活感が出る」と、先日あるインタビューで答えてびっくりされた。「生活感」という言葉がインタビュアーには新鮮だったのだと思うが、写真をやればやるほどそう感じるようになったというのが本音だ。

昨年、ある写真家と ー短期間ではあったがー 日常を共にする機会があった。そこで発見したのは、彼の日常が、彼の撮る写真に似ているということだった。彼の写真に見える美意識は、彼の生活の隅々に同じように浸透していたのだ。

前回のエントリーで述べたような距離感の近い「ウェットな」プライベート写真を日本人写真家が多く撮るのは、おそらく彼らの生活がウェットだからではないだろうか。

この意味で写真は、着るものに似ているのかもしれない。

たとえば結婚式に行くと、一様に皆立派な服を着ているが、それぞれ生活感が滲み出ていて、しっかりと「その人の」服になっているからおもしろい。日ごろから清潔にしている人、いない人、ものを大切にする人、しない人、そういう服を着るシチュエーションに馴れている人、いない人等々がなんとなく読めてしまう。同じ服でも着る人によって印象が違うのは、体型のせいだけではないのだ。

美しい写真が撮りたければ、日常を美しくするしかない。かっこいい写真が撮りたければ、生活をかっこよくするしかないのではないか。


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● 4/8-13 写真展「Awareness」詳細はこちら>

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March 26, 2008

写真に写るもの(1)〜距離感

「写真と距離感」ということを近頃よく考える。むろん、撮る側、作者にとっての距離だ。

それは、物理的な距離感はもちろんだが、むしろ心理的な距離感のことだ。

私の周囲には、写真から作者の心理的距離感を読み取ることに長けている人がいて、そういう人に写真を見せると、構図やトーンやテーマの前に、しばしば心の距離を指摘される。

たとえば、同じ人物スナップでも、「これは家族でしょ」「これは知らない人でしょ」と、あっさりとばれてしまう。不思議だ。

ただし、心理的距離が近ければいい写真かというと決してそんなことはなく、逆に近すぎて押し付けがましい、見ていて苦しくなる写真というのも(特に日本にはたくさん)ある。

私の場合、撮るときも、ネガをセレクトするときも、プリントするときも、距離感をできるだけ意識するよるようにしている。が、とっさの状況ではそういうわけにもいかないし、まして自分のことだから、けっこう分からないものだ。

また、物理的な距離感が心理的なそれにかなり影響を与えるとも感じていて、カメラやレンズをころころ替えると、心の距離も、ブレやすくなるように思う。

理想はいずれ「生涯ワンボディー/ワンレンズ」になることだが、そんな無理な理想は口にするものじゃないと、諸先輩方におこられるだろうな。


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● 4/8-13 写真展「Awareness」詳細はこちら>

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March 22, 2008

フォトコン

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告知が遅れましたが、現在発売中の「フォトコン」4月号に、「モノクロ写真の楽しみ方」というテーマで書いています。ぜひ書店で手に取ってご覧ください。

未発表のパリの写真も載っています。

メインはモノクロームの魅力についての2ページの記事ですが、別ページで、銀塩の「現像→プリント→フィニッシュ」という一連の流れについて、簡単ではありますが、私なりのやり方を書いています。

デジタルと違い、銀塩の暗室ワークは、何年も前から根本的な部分ではまったくやり方は変わっていませんし、また、私よりもキャリアの長い方も多く読者さんにはいるわけですから、あくまでも「私の場合はこうしています、ご参考までに」というスタンスで書いているつもりです。

これからも、つくる側、みる側両方にとっての、モノクロームの魅力、プリントの魅力を伝える仕事ができればいいなと思っています。

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March 15, 2008

exhibition "awareness"

来る4月8日(火)~13日(日)に、東京渋谷のルデコで写真展「Awareness(アウェアネス)」を開催します。

"Awareness"とは、「氣づき」とか「認識」の意。
「水」と「時」という二つのテーマにもとづいた私なりの「氣づき」をご覧ください。

オール銀塩モノクロプリント。
少数先鋭で展示します。

現在、私にとってブログは、「作品」を発表する場ではないのですが、写真展は、ブログには載せない「作品」を発表する場と考えています。ぜひいらしてください。

詳細はこちら

また、加藤法久さんの写真展「くらい to くらい」がルデコの別階で同時開催されます。モノクロファンでなくとも一見の価値ありですよ。

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March 06, 2008

open everyday

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Leica M3
Summitar 5cm
400-2TMY
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February 29, 2008

warmth

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Ricoh R8
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February 21, 2008

winter morning

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Epson R-D1
Summilux 35mm
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February 18, 2008

once in a lifetime (2)

レンズは、50mmと90mmを使おうかとはじめは考えていたのだが、結局35ミリと50ミリにした。ウェディングドレスを超広角で下から、みたいな素人発想はなし。オーソドックスな画角のほうが、後々飽きの来ない写真になると思う。

50ミリのレンズは別の選択肢もあったのだが、本人たちからのリクエストが、ズマールを選ぶ決め手になった。それは、「お腹の赤ちゃんに新郎が(日課として)話しかけている姿を撮ってほしい」というものだった。

先日、アルバムを直接本人に手渡し、一生に一度のセレモニーを記録する大役を果たせて安心した。Kさん、Uさん、末永くおしあわせに。

Leica M6, M3
Summilux 35mm, Summar 5cm
400TX
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11s

20s

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February 14, 2008

once in a lifetime (1)

先月、友人からの依頼で結婚式を撮影した。いわゆる「できちゃった婚」であったが、それゆえに二人の絆は固く、ファインダーを覗きながら感動するシーンが多々あった。本当にいい式だった。

私は、どうしてもカラーでとかデジタルでとかいう依頼がない限りは、ライカでモノクロフィルムで印画紙プリントでということにしている。それにはいくつか理由がある。

一つ目は、それが私の最も慣れ親しんでいる組み合わせだから。文字通り一生に一度の大切なセレモニー。撮り損ねるなどということがあってはならないわけで、できることなら、クセもなにもかも熟知している、最も信用のおけるものを使いたい。

もう一つは、モノクロ写真は、カラー写真に較べて、その時の想い出の印象に忠実だと思うからだ。できるなら、将来30年、40年と連れ添ったあと、二人で眺めて懐かしいと思えるようなアルバムにしたい。

そして、私個人がまだ、バライタ印画紙のモノクロプリントに勝るものがないと思っているからだ。

Leica M3
Summar 5cm
400TX
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01s
05s

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February 10, 2008

polaroid drops instant film

今朝、CNNニュースを観ていたら、ポラロイドがインスタントフィルムの製造を止めるというニュースが流れた。

http://www.dailypress.com/business/dp-biz_marketbrfs_02091feb09,0,6958469.story?track=rss

ポラロイド社では、インスタントカメラの製造は2年前に既に止めており、インスタントフィルムは今後1年間の販売となる。その後は、フジが世界で唯一インスタントフィルムを製造する大手メーカーになる、とニュースでは言っている。

「ポラを切る」(フィルム撮影の前にインスタントフィルムでテスト撮影をすること)という業界用語があるのだが、それも今後は「フジを切る」になるのか?!

冗談はさておき、ポラロイドのインスタントフィルムには、単にインスタントということだけでなく、独特の色合いで多くのファンがいる。

私は作品にポラロイドを使っていないが、一度は使おうとしていろいろリサーチしただけに、その魅力は知っている。また一つ、写真表現の選択肢が減り、残念だ。

Image_54

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February 07, 2008

the tone

もう20年以上も前のことであるが、異国の地で、もっぱらたいくつしのぎとさびしさをまぎらわせるため、毎日鉛筆画を描いていた時期があった。

そのころは主にポートレートを描いた。ポートレートは、 身体や顔の個々のパーツのバランスを丁寧に捉えなければならない。 と同時に、その人らしい特徴もつかまなければならない。それらすべてが違和感なく紙の上に収まって、はじめてポートレートと呼べるものになる。けっこう難しい。

鉛筆画の魅力は ー いまになって分かったのだが ー、モノクロ写真と似ている。つまり、黒と白の濃淡だけですべてを表現するという点にある。しかも、鉛筆と消しゴムと、あと日本では見かけない一つの小道具を使うだけで、独特のグレーを帯びた、非常に緻密な表現ができる。このシンプルな原理で無限のトーンが出せるという点が、私の性に合った。選んだ題材にたまたま恵まれたせいもあり、最初の作品でいきなり学校で評判になった。その後周囲からもよく「私にも描いてほしい」と言われ、嬉々として夜を徹したものだ。

そんな十代の頃の記憶は、すっかりどこかに忘れていたのだが、ギャラリー・バウハウスで開催中の「清家冨夫写真展 West Pier」をみて、それがリアルに甦ってきた。

清家氏は、写真に対する基本的な姿勢は一貫させながらも、毎回違うスタイルで、観る者を驚かせる。今回は中判による撮影と聞いて、勝手にいろんなイメージを想像していたのだが、もののみごとに裏切られた。その驚きの中身はぜひギャラリーで発見してほしい。

それとは別に今回の新作には、不思議な既視感があった。はじめその理由が分からなかったのだが、ギャラリーを去る直前になって、それが作品のグレートーンによるものだと気が付いた。約20点のイメージの中には、かつて私が異郷の田舎の家で、ちいさなライトの下で夢中で追いかけた、あのトーンがあったのだ。

それともう一つ。あえてタイトルへの言及は避けるが、West Pierの作品以外に、凝視すると泣いてしまうかもしれないと直感し、本心とは裏腹に、とっさに通り過ぎてしまった作品がある。こういうことを実はほとんど経験したことがない私は、少々戸惑った。次回ギャラリーに行くときもまだ、凝視できないかもしれない。

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(c) Tomio Seike

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February 01, 2008

inside/outside

Sfz_s


Leica M3
Summitar 5cm
400-2TMY
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January 27, 2008

snowy

Snowy_s_2


Leica M3
Summitar 5cm
400-2TMY
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January 21, 2008

forbidden

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Ricoh Caplio R7
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January 17, 2008

remembrance

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Ricoh Caplio R7
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January 12, 2008

an angle

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Ricoh GR Digital II
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January 08, 2008

pier

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Minolta TC-1
E100GX
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January 03, 2008

non title

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GR Digital II
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December 29, 2007

thank you

今年一年を振り返ると、やり残したことが多すぎて愕然としますが、気持ちを新たにまた来年、輝く作品を世に出せるようがんばります。

今年も応援してくださったあなたへ感謝申し上げます。ありがとう。

Kr0104s


Leica M6
Summilux 35mm
KR
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December 26, 2007

ray

R0010365s

Ricoh GR Digital II
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December 23, 2007

london

パリのあとは高速鉄道ユーロスターでイギリスに移動した。窓の外の景色は、パリを出たとたんに農業国フランスを実感させるものになり、さらにドーバー海峡を抜けると、まった違う文化に来たのだと一目で分かるものに変わった。

イギリスはわずか数日の滞在であったが、充実していた。そのうちの一日は、イギリス在住の写真家Sさんにロンドンの写真ギャラリーを案内していただくという非常にぜいたくな機会を得た。

最初に行ったギャラリーでは、偶然か必然か、日本特集として、1階から3階まですべて日本人写真家の写真のみを展示していた。

そこに多く並べられていた日本の二昔ほど前の農村や一昔前の過密都市の光景を暗室テクニックでクドくさせたイメージたちは、エキゾティックを通り越して病的に私たち二人には見えた。それは、我々をひどく居心地悪くさせた。

だが、若いギャラリーのスタッフたちは、我々がそんな印象を抱いているとはつゆ知らず、いくつかの写真を誇らしげに説明してくれた。我々にとっては日本を正確にあるいは美しく反映していないと思えるイメージが、 西側の視点から見たらきっと、極東の島国にたいする彼らの固定観念を分かりやすくなぞってくれるイメージなのだろう。それは、我々東洋人が遠い国、たとえばフィンランドの写真に「ムーミンの」森や谷を期待する心理や、戦場の写真に悲惨な構図を期待する心理と、大差はないのかもしれない。

我々はその後、サルガドが世界各地で撮影したモノクロ写真を展示するギャラリーに行った。展示写真の多くは、それをギャラリーが意図したのかそれともサルガド本人が意図したのかは分からないが、写真が撮られたそれぞれの国や地域にたいするステレオタイプに多かれ少なかれあてはまる写真であった。

サルガドの撮るたとえばインドのイメージと、先ほどのギャラリーにあった日本人写真家による日本のイメージは、エキゾティック、ステレオティピカルという点において、共通するものがあった。

はたしてインド人は、サルガドのインドの写真を自分のリビングルームに飾るだろうか。

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"brighton's pier"
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December 20, 2007

paris (3)

パリフォトには、日本人作家の写真も多く並べられていた。

だが、何かが違う。

日本で何度も目にした、しかもギャラリーでプリントをみたことのある写真でさえ、受ける印象が違っていた。

そこにはまるで、海外のホテルで日本の衛星放送のニュースを観るときのような、妙な距離感があった。海外にいると、 日本という国とその人々の生活が、いま目の前にある世界とは直接影響ない場所で、まったく異質な「渦」を巻いているようにみえる。 日本の国会の映像や地方の祭りでのおばあちゃんへのインタビューが、すごく遠くのイメージになる。日本にいるときは現実であるものが、海外にいると非現実に感じるのだ。

同じように、そこにある日本人作家の写真の多くは、どこか遠くの不思議な国の、不可解な「渦」に属するイメージだった。

パリフォト会場には、日本の写真界に流れる文脈とは、違う何かが流れていた。どちらが上とか下ではなく、互いに異質な「渦」のなかにあるのだ。

私はちょっと途方に暮れた。

価値というものは、立地点をかえるだけで、まったく別なものになり得るのだということを、ここでもまた見せつけられたからだ。

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"another point of view"
Ricoh GR21
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December 17, 2007

paris (2)

パリフォトでは、4日間通して、会場に並べられた無数の作品を何度も何度も眺めた。

幸か不幸か私にとってはどうしても欲しいという写真がなく散財せずに済んだのだが、そんな極東からの1ビジターの動向とは対照的に、欧米のコレクターたちと主に西欧と米国から集まったギャラリーとの間では、日本の写真マーケットから考えると驚愕に値するほどの量の写真と富がやりとりされていた。

我が国ではいまだ写真のプリントをコレクトするという習慣は根付いていないし、もしかするとこれからも盛んになる可能性は低いかもしれない。

その原因は、住宅事情や芸術文化の成熟度などといった誰でも思いつく安易な尺度で片付けられがちだが、本当はもっと違うところにあるのではないかと、ルーブルの地下で直感した。

それが何かは、パリフォトで自分なりにはなんとなく分かったつもりだが、まだ確信を得たわけではないので、ここで語るのはやめておく。

それに、それを考えすぎると、自分自身の作品がよからぬ方向に行きそうな気もするし。

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"before dark"
Ricoh GR21
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December 14, 2007

paris (1)

もう先月のことになるが、パリフォト2007(Paris Photo 2007)に行ってきた(2007/11/15-18)。散らばっていた欧州での印象の断片を寄せ集めるのに少々時間がかかってしまったが、ようやく少しだけ整理がついた。ネガの現像も最近終わった。

さて、パリフォト。これだけフォトグラファー人口の多い日本であるが、世界で最も大きな写真イベントの一つであるパリフォトを知っている人は、案外少ないのではないだろうか。

パリフォトとは、簡単にいえば、 年に一度ルーブル博物館の地下にあるイベントスペースに、ヨーロッパ、アメリカを中心とするプライベートギャラリーや出版社が、自分たちの所有する写真を持ち寄り、売るというものだ。要は、写真の即売会だ。

だが、日本語の即売会という響きから連想される蚤の市的イメージからはほど遠く(話は違うが、よく「フリーマーケット」を”Free Market”と誤解している人がいるが、実際には”Flea Market”(蚤の市)だ)、そこで売買される写真は、最低でも1500ユーロくらいの値がつけられる(最高は知らない)。

日本の庶民的な感覚から言えば、絵画ならいざ知らず、一枚の写真に20万円の金額を出すのは、「詐欺じゃないのか」と親兄弟に揶揄されるようなものだろう。だが、欧米の写真コレクターからすれば、掘り出し物の写真が仮にその値段で手に入れば、笑いが止まらないくらいの「安い買い物」だ。

ギャラリーの出展料は、最低でも300万円。だが、それに見合うだけの売り上げがあると聞く。

買い手は、純粋なコレクターのほかに、投資目的の人も多いそうだ。世界の有名なアートオークションで、写真の占める割合が大きくなってきているのもその証拠だ。

人気の中心は、ヴィンテージ・モノクロプリントと、壁一面を隠してしまうほど大きなコンテンポラリー・カラープリントのようだ。

BMWがスポンサーになってから、かなりコマーシャル色が強くなってきたらしいが、同社が写真家に贈る賞もある。出展ギャラリー所有の写真のなかから10数点がノミネートされ、グランプリが選ばれる。

今年グランプリに選ばれたのは、Jitka Hanzlováによる11x14くらい(ノミネートされた中ではもっとも小さなイメージ)の、群れる錦鯉を撮ったカラー写真だった。それを見た時、「なんでこれが?」と思った。正直言って、日本人がよく撮る観光写真のように思えたからだ(作者はチェコ人。彼女の森の写真は好きだけど)。作者のネームバリューか、審査員方には錦鯉が珍しかったのか、はたまた私のセンスが違うのか。

***

写真はパリ市内にて。あと数日で日本では現像できなくなるコダクロームは、渡欧前にMさんからからいただいた粋な餞別。感謝。

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"fallen leaves"
Ricoh GR21
KR
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December 11, 2007

descending

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Ricoh GR Digital II
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December 06, 2007

summilux

先週から今週にかけて、ある雑誌の記事のために、ライカの新レンズ「ズマリットM」4本でのテスト撮影をした。なかなか面白い結果が出たと思うので、興味のある方はぜひ書店でご購入を(1月20日発売の2月号)。

ところで、その一部として、往年のライカレンズとの描写の比較をしているのだが、35ミリにはズミルックスを使用した。

絞りが開放F2.5の新ズマリットとは比較にならないので雑誌には掲載しない予定だが、こんな写真が撮れた。

ズミルックスの絞り開放。

見た瞬間思わずため息。こんなにしっとりやさしい描写のレンズが世に出ることは、もうないんだろうな。

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Leica M8
Summilux-M 35mm
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November 29, 2007

toward the light

GR Digital II での初のエントリー。

発見や学びの多かった欧州での写真(現像中)は、しばらくしてからアップの予定。