一杯のコーヒーから(3)
コーヒーを飲んでいつも面白いと思うのが、同じコーヒーでも、抽出する人によって味が違うということ。
私のよく行くカフェでは、オーナーである世界バリスタ選手権1位のオーストラリア人バリスタを先頭に、同じブレンドから一人ひとりまったく違う味のエスプレッソを抽出してくれ、飲み手を楽しませてくれる。
同じカメラやレンズ、フィルム、印画紙を使っていても、一人ひとり写真のトーンが違うのと一緒。不思議だが、だからこそ面白い。ちょっと大げさに言えば、言葉ではウソがつけても、コーヒーではウソはつけない。
自分でコーヒーをいれはじめたのは、10年くらい前だろうか。友人たちと旅行に行ったとき、たまたま宿にあったものでつくったら「アダチのいれるコーヒーは美味い」とおだてられてその氣になった(笑)。その後エスプレッソは8年、ネルドリップは4、5年くらいやっている。
先日の写真展では、時間があるときは、その人に故郷や仕事の話を聴いて、それをイメージしながらネルでコーヒーをいれた。そのようにいれたコーヒーはたいがい、そのことを伏せていても、不思議と本人に絶賛された。いわば特定の飲み手にチューニングされたコーヒー。そういう芸当ができるようになったのは、ごく最近のこと。
飲み始めて十数年。いつの間にか、もう引き返せないところまで来てしまったようだ。
(つづく)
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