photo and essay

March 30, 2008

写真に写るもの(2)〜生活感

「写真(プリント)には撮る人の生活感が出る」と、先日あるインタビューで答えてびっくりされた。「生活感」という言葉がインタビュアーには新鮮だったのだと思うが、写真をやればやるほどそう感じるようになったというのが本音だ。

昨年、ある写真家と ー短期間ではあったがー 日常を共にする機会があった。そこで発見したのは、彼の日常が、彼の撮る写真に似ているということだった。彼の写真に見える美意識は、彼の生活の隅々に同じように浸透していたのだ。

前回のエントリーで述べたような距離感の近い「ウェットな」プライベート写真を日本人写真家が多く撮るのは、おそらく彼らの生活がウェットだからではないだろうか。

この意味で写真は、着るものに似ているのかもしれない。

たとえば結婚式に行くと、一様に皆立派な服を着ているが、それぞれ生活感が滲み出ていて、しっかりと「その人の」服になっているからおもしろい。日ごろから清潔にしている人、いない人、ものを大切にする人、しない人、そういう服を着るシチュエーションに馴れている人、いない人等々がなんとなく読めてしまう。同じ服でも着る人によって印象が違うのは、体型のせいだけではないのだ。

美しい写真が撮りたければ、日常を美しくするしかない。かっこいい写真が撮りたければ、生活をかっこよくするしかないのではないか。


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March 26, 2008

写真に写るもの(1)〜距離感

「写真と距離感」ということを近頃よく考える。むろん、撮る側、作者にとっての距離だ。

それは、物理的な距離感はもちろんだが、むしろ心理的な距離感のことだ。

私の周囲には、写真から作者の心理的距離感を読み取ることに長けている人がいて、そういう人に写真を見せると、構図やトーンやテーマの前に、しばしば心の距離を指摘される。

たとえば、同じ人物スナップでも、「これは家族でしょ」「これは知らない人でしょ」と、あっさりとばれてしまう。不思議だ。

ただし、心理的距離が近ければいい写真かというと決してそんなことはなく、逆に近すぎて押し付けがましい、見ていて苦しくなる写真というのも(特に日本にはたくさん)ある。

私の場合、撮るときも、ネガをセレクトするときも、プリントするときも、距離感をできるだけ意識するよるようにしている。が、とっさの状況ではそういうわけにもいかないし、まして自分のことだから、けっこう分からないものだ。

また、物理的な距離感が心理的なそれにかなり影響を与えるとも感じていて、カメラやレンズをころころ替えると、心の距離も、ブレやすくなるように思う。

理想はいずれ「生涯ワンボディー/ワンレンズ」になることだが、そんな無理な理想は口にするものじゃないと、諸先輩方におこられるだろうな。


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December 23, 2007

london

パリのあとは高速鉄道ユーロスターでイギリスに移動した。窓の外の景色は、パリを出たとたんに農業国フランスを実感させるものになり、さらにドーバー海峡を抜けると、まった違う文化に来たのだと一目で分かるものに変わった。

イギリスはわずか数日の滞在であったが、充実していた。そのうちの一日は、イギリス在住の写真家Sさんにロンドンの写真ギャラリーを案内していただくという非常にぜいたくな機会を得た。

最初に行ったギャラリーでは、偶然か必然か、日本特集として、1階から3階まですべて日本人写真家の写真のみを展示していた。

そこに多く並べられていた日本の二昔ほど前の農村や一昔前の過密都市の光景を暗室テクニックでクドくさせたイメージたちは、エキゾティックを通り越して病的に私たち二人には見えた。それは、我々をひどく居心地悪くさせた。

だが、若いギャラリーのスタッフたちは、我々がそんな印象を抱いているとはつゆ知らず、いくつかの写真を誇らしげに説明してくれた。我々にとっては日本を正確にあるいは美しく反映していないと思えるイメージが、 西側の視点から見たらきっと、極東の島国にたいする彼らの固定観念を分かりやすくなぞってくれるイメージなのだろう。それは、我々東洋人が遠い国、たとえばフィンランドの写真に「ムーミンの」森や谷を期待する心理や、戦場の写真に悲惨な構図を期待する心理と、大差はないのかもしれない。

我々はその後、サルガドが世界各地で撮影したモノクロ写真を展示するギャラリーに行った。展示写真の多くは、それをギャラリーが意図したのかそれともサルガド本人が意図したのかは分からないが、写真が撮られたそれぞれの国や地域にたいするステレオタイプに多かれ少なかれあてはまる写真であった。

サルガドの撮るたとえばインドのイメージと、先ほどのギャラリーにあった日本人写真家による日本のイメージは、エキゾティック、ステレオティピカルという点において、共通するものがあった。

はたしてインド人は、サルガドのインドの写真を自分のリビングルームに飾るだろうか。

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"brighton's pier"
Ricoh GR21
KR
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October 07, 2007

senses

ずっとあえて無視し続けていたオーディオが最近気なっていて(かつてはオーディオとカメラだけには絶対ハマるまいと思っていたのだが)、素人なりにちょっとだけ調べたりしている。

好みの音色は、あたたかいけどエッジが少し立って、立体感があって、リアルで、ノスタルジックで、やさしくて、細かな情報も拾うけど硬くなくてちょっと濃厚な感じ。クリアすぎるより、ちょっとだけクセのあるのがいいな。そんな音の出るオーディオセットが欲しい。

ちょっと待てよ。これって、レンズの好みといっしょじゃないか。

こんなレンズは現代玉にはない。ということは、オーディオでも、こんな機材はもう現行ではないのだろうか(カメラのときのように「密林」に踏み入ってしまわないようにオーディオでは注意しよう)。

日本の大手メーカーのオーディオ製品は、数値の上での性能はいいのに、音に「味」がないと聞く。この状況もやはりカメラ業界といっしょだ。現代レンズは、MTFとか、数値の上では優秀だが、「味」がない。

上に挙げた私の好みの大半は主観的要素で、数値化できない。たとえば、「ノスタルジック」なんて、どうやったって数値化できない。「立体感」だってそうだ。

ある写真家も言っていたが、数値ばかり気にしてレンズをつくるのは、pHなどの数値ばかり気にしてワインをつくるようなものだ。数字がよくてもそれが美味いとは限らない。数値に頼るのは、生産者が自分たちの主観的判断に自信がないからだろうか。

カメラ(レンズ)メーカーは、今こそ、その数値化できない要素にスポットを当て、我々のような現代玉に満足できないフォトグラファーたち(私の周囲はそんな人ばかりだ)を唸らせるレンズをつくってほしい。ひとつのビジネスチャンスだと思うのだが、どうだろう。

ところで、人間の好みは五感すべてに共通するのだろうか。コーヒーの味の好みも、私の場合、音色の好みに似ている。

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Ricoh Caplio R7
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September 05, 2007

focomat

カメラやレンズはライツのものを使いながら、最終的にアウトプットするときの引伸し機が他社製なことに(それはそれで立派なマシンだが)、ずっと居心地の悪さを感じていた。

モノクロプリントをやればやるほど、35ならフォコマートIcに行き着くのは自然な流れだった。熱心に探し歩いたわけではないが、中古カメラ屋に行けば必ず、チェックしていた。だが、なかなか縁がなかった。

しかしついに、そのフォコマートが、本日、我が暗室にやってきた。

しかもそれは、銘機と呼べるもの、つまり、私が心の師と仰ぐ写真家から譲り受けたものだ。2ディケードにわたり数々の名作を生み出したフォコマートがいま目の前にあると思うと、下っ腹にぐっと力が入るような感覚を得る。初めてライカボディを買った時のうわついたよろこびとは違った、大切な何かを受け継ぐような感覚だ。

師に心より感謝。運搬を手伝ってくださったSさんにも感謝。

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August 24, 2007

quality / quantity

先日友人のAさんと、ある写真家二人によるトークを聴きにいった。

二人に遠慮のある司会者がいまひとつ場を仕切れなかったからか、話の盛り上がりには欠けた感は否めないが、一つ、非常に印象に残ったことがある。それは、二人とも、最近出版した写真集のために、数年かけてかなりの量を撮っていた点だ。片や4x5ネガで約600枚、片や35モノクロネガで約500本、プリント約2000枚。

目標なくやみくもに何千回素振りしてもいっこうに野球は上達しないのと同じように、ただ量を増やせばいいというものではない。だが、質と量の関係については、ちょっと考えさせれた。

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Leica M3
Summitar 5cm
HP5 Plus
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August 06, 2007

time is money

先日ふと、「時間の使い方を見ると、その人のお金の使い方が分かる」のではないかと思い立った。

たとえば、いつも時間を計画的に使う人は、お金も計画的に使う。

また、家族や友人など、他人のために多く時間を使う人は、他人のために多くお金も使う。

Time is Money.

いままで、「時はお金のように貴重だ」という意味に解釈していたこの諺に、違う解釈があることに気づいた。

そういえば、英語では、時間もお金も、「使う」という動詞は"spend"だ。

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Leica M6
Summilux 35mm
400TX
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February 22, 2007

その人のことがよくわかるもの

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私のかばんにはだいたい何かしらのカメラが入っていて、大きさにゆとりのないとき以外は、たいがいライカM6が入っている。GR21を入れていることも多い。普段からカメラ専用バッグを持ち歩くのは嫌いで、一般的なかばんにパテションなどを入れて使っている。カメラ以外には、手帳、ペン、名刺、本、携帯電話などが入っている。ノートパソコンもよく持ち運ぶ。

ところで、かばんとその中身を見ると、その人のことがけっこうわかると思う。

その人が何を好きで、何に価値を置いているか、生活がシンプルか/複雑かなどなど。

かばんの中身がすっきりしている人は、たいがい生活がシンプルだし(かばんを持たない人はもっとシンプル)、かばんのなかがぐちゃぐちゃな人やいつも複数のかばんを抱えている人は、日常生活もだいたい混乱している。

あと、その人の性格がよくわかるのが、自動車の運転。

昔、年下の美人の友人が運転する車に乗せてもらったとき、あまりの大胆な運転に、恋心に発展してもおかしくなさそうだった気持ちが一気に吹っ飛んだことがあったっけ。

逆に、えー実はこんなに慎重な人だったんだと思う人もいる。

車はホントによくわかる。

ちなみに私の運転は、不器用かつ不注意が多い、かな。それでいて、へんなところで大胆。あまり運転には向かないかも。

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Ricoh GR DIGITAL
F2.4 1/12s ISO154
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December 08, 2006

芸術体験

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生まれて初めての「芸術体験」は、ピカソだったと記憶している。

それは、小学生3、4年生のころだっただろうか。近所(といってもバスで20分くらい行ったところ)の公民館みたいなところに全国各地を経て巡回してきた「ピカソ展」だった。

幼い私の認識の中ではピカソという名前だけが一人歩きしていて、彼がどんな絵描きなのかまったく先入観がなかった。だが何か惹かれるものを感じたのであろう、私は母に、そこに行きたいから連れて行ってくれと言った。

実物を目の当たりにすると、後にそれがキュビズムと呼ばれるということを知る独特の作風は、女性器があからさまに描かれていた事実とともに、小学生の感性にかなりの衝撃を与えた。

なぜピカソはこのように描かざるを得なかったのか。

作風を通り越した何かを私は感じとっていたのか、居心地の悪さとずっとこのまま凝視していたいという感覚を同時に得た。

入り口近辺に並べられていた、後にそれが青の時代と呼ばれるということを知る時代の作品を、当時の私は好きだと感じたこともはっきり覚えている。

その後大人になり、東京に住み、芸術に携わり、ギャラリーにも多く足を運ぶようになった。

今でも心の底で、あのときのあの衝撃を味わいたいと思っていつもギャラリーのドアを開けているような気がする。

Ky_s
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Ricoh GR21
AE 400TX @100 ISO
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May 26, 2006

治る

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気功師のS先生。いま、私の友人Tさんを治療中。

Tさんはかつて足を痛め、将来は車椅子になると西洋医学の医者には匙を投げられていたのですが、S先生のおかげで、どうやら治りそうなのです。

私は先生に「気管支が弱いね」と指摘されました(なんでわかるんだろう)。

治療室の入り口には、「治る」と書かれた書が飾ってあります。

Dr_suzuki_s

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Leica M6 + Summilux-M 35mmF1.4
F2.8 1/125s 400TX(Tri-X)@160
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May 22, 2006

バスライド

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両親(私にとっては曾祖父母)の法事をひとまず終え、会食の会場へとマイクロバスで向かう祖父。

どんな心持ちで、乗っていたのでしょうか。


Life is like a long bus ride.

人生は、長いバスライドのよう。


Yujionthebus_s

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Leica M3 + DR Summicron 50mmF2
F2.8 1/50s 400TX(Tri-X)
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May 02, 2006

シンプリシティ

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もともとその傾向はあったのかもしれませんが、最近特に、生活をシンプルにすることによろこびを感じるようになってきました。

シンプルといっても、切り詰めた生活という意味よりは、できるかぎり上質のものだけを選んで持ち、使い、口にするという意味です。

どんなにたくさん所有しても満たされなかった心が、シンプルだけど上質なものをたった一つ持つだけで、満たされることがよくあります。

さて、今回の写真は、いつのながらSさんからお借りしたレンズ、「テッサー」で撮ったものです。コンタックス・マウントのものをアダプターを介してライカで使用したのですが、撮った写真の艶っぽさと質感は、他のレンズではありえないものです。最初に見たときは驚きました。

少し専門的な話をしますと、写真用のレンズは、凹レンズや凸レンズなどの素材を組み合わせて一つの筒に入れているわけです。現代では、機能を向上させるために、多くの素材で構成されている場合が多くあります。

ところが、このテッサーは、たったの4枚の素材を組み合わせたレンズなんです。もっともシンプルなレンズの一つです。

でも、この描写、です。

高性能を謳った現代レンズをどれだけ使っても満たされない心が、このシンプルなレンズの描写によって満たされるのです。

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Leica M3 + Tessar 50mmF3.5
F3.5 1/250s 400TX(Tri-X)
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April 18, 2006

花 04

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最近の私的キーワードは「循環」(そのときどきのキーワードがあるんです、はい)。

自然って、ちょっとずつ姿を変えながら循環していきます。それにたいして、近代以降の産業社会がつくりだしてきたものは、ほとんど循環できません。たとえば、人間の排泄物(失礼)にしたって、本来は排泄された土地に吸収されて肥やしになっていたのでしょうが、今は、すごく遠くまで下水で運ばれておしまい。困ったもんだ、でもこの便利さは手放せない。自己矛盾ですね。

いま部屋にある植物たちも、人間のために育てられ、売られ、人間の部屋で循環せずに枯れてしまう。かなしいけど、ありがたいことです。

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Contax Aria + Distagon 35mmF1.4
F1.4 1/1000s FUJI PRO400
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April 15, 2006

花 03

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ここのところ、仕事場に、植物が集まってきています。

かつて観葉植物さえも枯らしてしまっていた私は、それがトラウマになって、ずっと自分で植物を買う勇気がなかったのですが、いただくとうれしいし、また実際に部屋にあると、気持ちが落ち着きます。

ある人によれば、植物は、人間の代わりに枯れてくれるのだそうです。そうすると、その観葉植物をも枯らしていた当時の私は、よほど疲れていたのかもしれません。ありがとう、植物さんたち。

カメラは、コンタックス・アリア。一眼レフでも私は、35ミリレンズが一番好きです。アリアのクリアなファインダーで覗く35ミリの世界は、どことなく品があるように私には見えるので、正確なフレーミングを心がけながら撮っていると、背筋が伸びてくるような感覚を得るのです。

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Contax Aria + Distagon 35mmF1.4
F2 1/1000s FUJI PRO400
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April 07, 2005

桜になりたいと思っていた頃

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かつて、私には、桜になりたいと思っていた頃がありました。

一年中「花を咲かせる」ことを周囲から期待されていると思い込み、常に必死にがんばっていた時期でした。年にたった一度だけ潔く花を咲かせて散る桜がうらやましかったのです。短い間ではありますが、人々をしあわせな気分にさせる。そんな桜のように創作活動ができたらいいなと思っていました。

今はもう、そんなふうには思いません。少しは地に足が着いているのかな。

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Ricoh GR21 AE TMY
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March 25, 2005

脳は情報量の多いものを好むか?

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今回は、旅から離れて、最近考えていることについて書いてみます。写真は旅の続きです。

先日とあるセミナーで、デザイナーの原研哉さんの話しを聴きました。その中で、原さんが「人間の脳は情報量が多いものを喜ぶ」という話をしていました。

原さんは、人をぞくぞくさせる「感覚」からプロダクトを発想する「HAPTIC」というコンセプトを提唱しています。サイトの文章を引用すると、

「HAPTICとは触覚を喜ばせるという意味。触覚性を物づくりの第一義とした時、どんなデザインが生まれるか。ここでは、22人の建築家やデザイナー、左官士、ホームエレクトロニクスのメーカーなどに依頼し、HAPTICな日用品をデザインしてもらいました。毛の生えた提灯、柔らかいドアノブ、果皮そのままのジュースパック、蛙の卵のようなコースターなどなど、新鮮なプロダクツが誕生しています。」

ぎょっとしたりきもちわるいと思ったりもするデザインは、これまでのプロダクトの概念からすると非常に斬新です。でも同時に、脳の未知な部分が刺激されるのがよく分かります。

原さんはまた、バリ島に行った際、宿泊したホテルの石畳を裸足で歩き、その磨り減った石畳が足の裏に与える情報量の多さに感動したというような話もされました。それはおそらく、石そのものが持つ情報量でもあり、雨風にさらされた跡でもあり、その上を歩いた人々の残していった情報の量でもあるのでしょう。

この文脈で写真について考えると、同じ被写体を撮っても、35ミリフィルムよりも面積の大きなブローニーフィルムで撮ったほうがいい写真に思えることが多くあるのは、フィルムの情報量の問題かもしれませんし、また解像度が高いレンズやフィルムを多くの人が喜んで使うのも、やはり情報量と関係あるかもしれません。

さらにいえば、連続性のないデジタルデータによる「画素数」以上には情報を収めることのできないデジタル写真より、曖昧で連続性のあるアナログデータによるフィルム写真のほうが、もしかすると、脳を喜ばせる可能性が残されているのかもしれません。

もっとも、いくらアナログで撮影しても、アウトプット(印刷とか)の過程がデジタルであれば、両者には差がないどころか、むしろ漏れのない分、デジタルのほうが情報量が多いのかもしれません。


さて、以下はタイでの写真です。上の文章に反して、フィルム写真の手焼きプリントでありながらも、デジタルスキャナで取り込んで、デジタルでアウトプットしています(笑)。

thekid************
彼は写真が嫌いでした。
Leica M6 + Summilux 35mmF1.4
F2.8 1/500s TMY
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koike************
蓮の花を売る女性。
Leica M6 + Summilux 35mmF1.4
F4 1/500s TMY
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punk************
ウィークエンドマーケットで遭遇したパンクたち
Leica M6 + Summilux 35mmF1.4
F4 1/1000s TMY
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February 28, 2005

ライカとデートとラブレター

今日は彼女とデート。彼女のことを知って随分経つが、今日がはじめての外出。

天気もいい。ちょっと電車で「小さな旅」でもしてみようか。

いまどき珍しく古風な彼女は、口数が少なく、ボクから質問しない限り自分から口を開くことはない。はじめはとっつきにくいかなと思ったが、いざ一緒に歩いてみると、それゆえかえって安心する。

彼女は真昼の日差しが苦手そうだったので、陽がちょっと傾くまでカフェで話しをした。ボクは彼女をじっと見つめた。ちょっと小柄だけど存在感のある彼女は、本当に美しいと思う。

夕方、海を見に行った。波打ち際で彼女の手を握った。ひんやりとした彼女の肌には、なんともいえない品があった。

日が暮れてから都心に戻って、食事をした。帰りがけに、ビルの上から二人で夜景を見た。彼女が見ているものが、ボクにも見えているような気がした。彼女の目を通して、ボクはこの夜の街並みを見ているのだ。

別れた後、家に着くと、すぐに手紙を書いた。丁寧に言葉を選んで、お気に入りの万年筆を使って書いた。

いざ投函してみると、もしかして余計なことを書いてしまったのではないか、返事は来るんだろうか、とあれこれ心配になった。

数日後、返事が届いた。

ドキドキしながら封を開けてみた。そこには、手書きのきれいな文字で書かれた、やさしい文章があった。心配は無用だった。こんなに美しい手紙を、ボクはこれまで読んだことがあっただろうか。一言一言に彼女の想いが込められている。ボクは何度も何度も読み返した...


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...以上、すべて作り話。

ちょっとくさいたとえ話だが、実はこれがまさに、私がはじめてライカを使ったときの気持ち。

ライカは、自動では何一つしてくれない。露出もピントもフィルムの巻き上げも、全部手動。撮る側にはまったくサービスなし。はじめは不安だったが、それが安心に変わるまで、あまり時間は要らなかった。

ライカは、シャッタースピードが1/1000までしかないので、真昼はちょっと苦手。レンズの個性を出すのにも、夕方のような、淡い光が最適かと思う。

撮影を終えてから現像を待つまでの空白の時間は、ちょうど、手紙の返事を待つときに似ている。露出は合っていただろうか。ピントは合っていただろうかと、あれこれ心配になる。

ところが、あがってきたフィルムを見れば、そんな心配は一気に吹き飛ぶ。ライカレンズのやさしい描写が、想い出をそのままそこに焼きつけてくれているからだ。一枚一枚に想いが凝縮されているように思える。


最新のデジタルカメラは、まるで、気の置けない友達と外出して、その直後に携帯メールをやりとりするようなものかもしれない。何枚撮ってもコストがかからないから気楽だし、すぐに結果もわかる。だが、画像を見るときにドキドキすることもないし、何度も見返すようなこともあまりないだろう。


私は、デジタルカメラを否定しない。むしろ、その合理性を肯定する側の者だと思う。

だが、今の私には、デジタルカメラとでは、こんなに豊かな時間は持てないし、まして「ラブレター」なんて書けないんじゃないだろうか。

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Leica M6 + Summilux 35mmF1.4
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February 25, 2005

静けさ

ライカは静かだ。

結婚式やクラシックのコンサートで写真を撮ることが多いのだが、ライカでなければ周囲にもっと気を使ってしまうだろうという場面は多い。

まずシャッター音。
擬音にすると「コト」とか「チャッ」とかいう感じ。M3などは、本当に優しく柔らかい音がする。
このレリーズの感触が好きでライカを使う人も多いと思う。

次にフィルム巻き上げ音。
電動ではないので、自分でひたすら静かに巻き上げる。
(デジタルなら関係ないが)

このようなライカの静けさは、被写体となる主人公をより自然な表情にさせると思う。

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この写真の二人は、昨年10月にフォーシーズンズホテルで式を挙げた。

二人の信頼関係が、このなにげない一枚に写っていると思う。


静けさは、本心を誘い出す。

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2004/10/31
Leica M3 + Summicron 90mmF2
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