「旅行」よりも「旅」が好きだ。
気の置けない家族や友人と行く「旅行」も好きではあるが、ときどき独りで歩く「旅」をやらないと、窒息しそうになる。私の中では、両者は違うものなのである。前者が「行くこと」と「観ること」に主眼を置いているのに対し、後者は、「体験すること」と「自分の頭で考えること」が中心となるからだ。
おそらく、最初の海外体験がいきなり一年間のアメリカでの生活だったことが影響しているのだと思う。それまで一度も海外に行ったことのなかった十代の若造が、突然アメリカの田舎町に放り出され、英語しか話せない家族と共に暮らし、地元の高校に通い、学び、遊び、運動をし、食べて、寝て、恋して、フラれて、笑って、泣いたのであるから、それに比べて、いわゆる観光旅行は、表面的すぎていつも物足りないと思ってしまう。
どちらかと言えば、毎日ホテルを移動して有名な観光地を順番に見に行くより、一箇所、それもできれば民家に留まって、そこに住む人々と同じような生活をして、その地に生きる人たちと交友を深めたいのだ。一人旅が好きだからといっても、別にバックパックを背に世界中を転々とするのが好きなわけでもない。その土地の日常の中に入って、それを体験したいのだ。
アメリカのあとにも多くの国に行ったが、いまだに深く印象に残っているのは、観光地で見たものではなく、韓国やタイの田舎で民家に泊まっておばあちゃんと一緒に朝食を食べたこととか、インドの山奥の村人と一緒にダンスしたこととか、エジプトで現地の人々と同じ服装をしてお前はエジプト人だと言われたこととか、そういう類のことが多い。
そんな「何を見たかよりも、何を体験したかのほうが大切」な私だったから、当然カメラもほとんど持ち歩かなかった。むしろ、「写真を撮っている暇があればそれをよく見て自分の脳裏に焼き付けたほうがいい」なんて、カッコつけていたクチだ。

そんな私が、一転して海外で写真を撮りたいと思い始めたのは、仕事でラオスに行くことが決まったときだった。突如として、ラオスで写真が撮りたくてたまらなくなった、しかも、ニコンでもキヤノンでもなく、どうしてもライカで、だ。ほとんど衝動的だったと思う。ラオス行きの話がなければ、ライカは今でも私の手元になかったかもしれない。そう思うと、私とライカを結び付けてくれたのは、ラオスなのかもとさえ思う。
これからしばらくの間、ラオスと、そこに行く直前に滞在したタイで撮った写真をお見せしたいと思う。海外での初めてのライカに嬉々としている私の姿が、フィルムの奥にしっかり写り込んでいると思う。どうぞお楽しみに。
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Leica M6 + Summilux 35mmF1.4
F2 1/1000s TMY
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