厩橋(うまやばし)
春のうららの隅田川・・・。
私にとっての隅田川のイメージは、この有名な歌の歌詞の印象からは程遠い。むしろそれとは正反対に近い、重くて切ないものである。
もしかすると、それは単に私がそんなうららかな日に隅田川を見に行ったことがないせいかとも考えたが、どうやらそうではなさそうだ。空のきれいな晴れの日に行ったことは数え切れないほどある。
隅田川を挟んで、かつては東京(江戸)とそうでない地域とが分かれていた。今も昔も多くの人が夢や希望や憧れや幻想を抱いて訪れる大都市東京。隅田川を越えると、そこが東京だ。
かつて東京の北側の玄関は上野であった。北国からの列車が隅田川を越えると、まもなく上野だ。荷物を網棚から降ろしつつ、心の準備をする。これから東京での生活が始まるのだ
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東京には、足を踏み入れるときの、独特の緊張感があると思う。少なくとも私にはそれがある。それは、大阪とも名古屋ともソウルともニューヨークとも違う。なにかとてつもなく広くて鬱蒼とした森に足を踏み入れるような感じとでも言おうか、ともかく、東京は私にとって、夢を生きるための舞台であると同時に、孤独や困難に耐えながら生きる、暗い大都会でもあるのだ。
北国の人々が隅田川を越えて東京で生活を始めると、遅かれ早かれ夢や野心を下方修正するときを迎える。それでももちこたえられる者はそこに残り、そうでない者は再び隅田川を越えて北へと帰る。隅田川は、そんなふうに、人々の心の狭間に流れている。
私が隅田川にかかる橋に魅力を感じるのは、もしかすると、心のギャップを橋渡す橋であるからかもしれない。成功と挫折。都会と田舎。その橋を渡って心のあちら側とこちら側とを行き来する。
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